相続手続きは、被相続人(亡くなった方)が遺言書を残しているかどうかで大きく異なります。遺言書がない場合は法定相続人全員の協議が必要となりますが、遺言書がある場合はその内容に基づいて手続きが進められます。
以下では、遺言書がない場合とある場合それぞれの相続手続きの流れを詳しく説明します。
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遺言書がない場合の相続手続きの流れ
遺言書がない場合、相続は法定相続に基づいて進められます。この場合、相続人全員で遺産分割の方法を話し合う必要があります。
1. 財産と相続人の調査・確認
まず、被相続人が残した財産と債務を全て把握することが必要です。預貯金や不動産、株式、車などの資産と共に、ローンや借金などの負債も確認します。また、相続人が誰になるのかを確定するため、戸籍謄本を取り寄せます。
相続人が確定しないと遺産分割協議を進められないため、このステップは非常に重要です。
2. 相続放棄や限定承認の検討
財産だけでなく債務が多い場合、相続人は相続放棄や限定承認を選択することができます。相続放棄は相続人としての権利と義務を一切放棄する手続きで、被相続人が借金を残していた場合に有効です。
限定承認は、相続する財産の範囲内でのみ負債を負担する手続きです。これらは相続の開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申請する必要があります。
3. 遺産分割協議
相続人が確定したら、遺産をどのように分割するか相続人全員で話し合います。これを「遺産分割協議」といいます。協議の結果、全員の合意が得られれば、遺産分割協議書を作成し、全員が署名・押印します。
この遺産分割協議書は、後の相続手続きに必要となるため、正確に作成することが大切です。
合意が得られない場合、家庭裁判所に調停や審判を申し立てて、裁判所の助力を得て解決することになります。
4. 相続財産の名義変更や手続きの実行
遺産分割協議書が完成したら、実際に財産の名義変更手続きを行います。不動産は法務局で相続登記、預貯金や株式は金融機関で名義変更の手続きを行います。この際、遺産分割協議書や戸籍謄本、印鑑証明書などが必要になります。
5. 相続税の申告と納税
相続税が発生する場合は、相続開始から10ヶ月以内に税務署へ相続税の申告と納税を行います。相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、この控除額を超える財産がある場合に相続税がかかります。納税のために財産を売却したり、分割する方法を事前に検討することも重要です。
遺言書がある場合の相続手続きの流れ
遺言書がある場合、遺産分割は基本的にその内容に従って進められます。ただし、遺言書の有効性や内容によっては、相続人間で追加の手続きが必要になる場合もあります。
1. 遺言書の有無の確認と検認
まず、遺言書があるかどうかを確認します。遺言書が見つかった場合、遺言書の内容に基づいて相続手続きを進めます。ただし、自筆証書遺言の場合、家庭裁判所での「検認」という手続きを行わなければなりません。
検認は、遺言書の存在を確認し、偽造や改ざんを防ぐための手続きで、遺言の有効性を保証するものではありません。
2. 遺言書の執行
遺言書に「遺言執行者」が指定されている場合、その人物が遺言書の内容に基づいて手続きを進めます。遺言執行者がいない場合、相続人全員で遺言の内容を実行します。遺言書が無効でない限り、その内容に従って財産の分割や名義変更が行われます。
3. 遺留分の確認
遺言書の内容が、特定の相続人に有利なものであった場合、他の相続人は「遺留分」を主張することができます。遺留分とは、法定相続人が最低限受け取ることができる相続財産の割合です。
例えば、配偶者や子どもなどの法定相続人には、法定相続分の半分が遺留分として保障されています。遺留分侵害額請求は、相続開始を知った時から1年以内に行う必要があります。
4. 相続財産の名義変更
遺言書の内容に基づき、相続財産の名義変更を行います。不動産については相続登記、預貯金や有価証券については名義変更の手続きを行います。この際も、遺言書のコピーや遺言執行者の証明書、戸籍謄本などが必要です。
5. 相続税の申告と納税
遺言書がある場合でも、相続税の申告と納税は必要です。相続開始から10ヶ月以内に、相続税申告書を税務署に提出します。遺言書の内容に基づいて相続財産が分割されるため、その分割方法に応じて納税額も決まります。
まとめ
遺言書がない場合とある場合で、相続手続きの流れは大きく異なります。遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、全員の同意を得て手続きを進めなければなりません。
一方で、遺言書がある場合は、その内容に従って手続きが進められますが、遺留分に配慮する必要がある場合もあります。いずれの場合も、専門的な知識が求められるため、相続手続きに不安がある場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
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