未登記建物とは、法務局の登記簿に記載されていない建物のことです。登記がない建物は、不動産の所有権を証明するための公的な記録がないため、相続手続きが特に注意を要するものとなります。
未登記建物の相続手続きは、相続人間でトラブルを防ぎ、適切な権利の引き継ぎを行うために慎重に進める必要があります。
以下では、未登記建物の相続手続きの流れと、必要な書類、そして注意点について詳しく解説します。
このページの目次
未登記建物の相続手続きの流れ
未登記建物の相続手続きには、登記されていないことに伴う特別な手続きが必要です。以下は、基本的な流れです。
1. 建物の所有者確認
未登記の建物は登記簿に記載がないため、建物が誰のものであるかを明確にする必要があります。所有者を証明するための主な手段として、固定資産税の納税通知書や建物の検査済証などが挙げられます。
被相続人(亡くなった方)がその建物に居住していた場合は、公共料金の領収書や住民票の情報も所有者確認の資料として役立ちます。
2. 相続人の確定
建物の所有者が被相続人であると確認できたら、相続人を確定します。相続人の確定は、他の相続手続きと同様に、被相続人の戸籍謄本や相続人の戸籍謄本を通じて行います。
3. 遺産分割協議
未登記建物を含む相続財産がある場合、相続人全員で遺産分割協議を行います。協議では、建物を誰が相続するのか、他の財産とどのように調整するのかを話し合い、合意が得られたら「遺産分割協議書」を作成します。
未登記建物が対象であっても、協議書には他の財産と同様に、建物の取り扱いが明記されます。
4. 未登記建物の登記申請
未登記建物を相続する際は、まず所有者としての登記を行わなければなりません。相続によって初めて登記を行う場合、次の手順で所有権の登記を申請します。
1. 建物表題登記
未登記の建物には、まず「表題登記」という、建物の物理的な情報(所在地や構造、床面積など)を登記簿に記載する手続きが必要です。この手続きは、土地家屋調査士という専門家が行います。
表題登記が完了して初めて、その建物が公的に記録され、次の段階の所有権登記が可能になります。
2. 所有権保存登記
建物表題登記が完了した後、相続人名義で「所有権保存登記」を行います。これにより、建物が正式に相続人の名義として登記され、法的に所有者として認められることになります。司法書士に依頼して手続きを進めるのが一般的です。
5. 相続税の申告
相続税が発生する場合、未登記建物も相続財産の一部として課税対象になります。建物の評価額は、市区町村が発行する固定資産税評価証明書をもとに算定されます。未登記建物であっても、適切に評価して相続税の申告を行うことが必要です。
未登記建物の相続に必要な書類
未登記建物を相続するためには、通常の相続手続きに加え、以下の書類が必要になります。
1. 被相続人に関する書類
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までのもの)
相続人を確定するために、被相続人の戸籍謄本が必要です。
被相続人の住民票の除票
被相続人の最後の住所を証明するために必要です。
2. 相続人に関する書類
相続人全員の戸籍謄本
法定相続人を確定するために必要です。
相続人全員の印鑑証明書
遺産分割協議書に押印するため、全員の印鑑証明書が必要です。
相続人全員の住民票
相続登記を行う相続人の現住所を証明するために必要です。
3. 未登記建物に関する書類
固定資産税の納税通知書
未登記建物が含まれる固定資産税の納税通知書は、建物の所有者を確認するための重要な資料です。
建物の検査済証や建築確認書
建物の物理的情報を確認するために役立ちます。
公共料金の領収書や住所の証明書
被相続人がその建物を使用していたことを証明するための補助資料として役立ちます。
建物表題登記に必要な書類(建物図面など)
土地家屋調査士に依頼する際に、必要な図面や資料を提出します。
未登記建物の相続に関する注意点
1. 登記されていない建物の権利争いのリスク
未登記の建物は法務局の登記簿に登録されていないため、法的には所有権が不明確な状態です。このため、相続が発生した後に相続人間で権利の争いが生じやすいです。
未登記建物は、相続前からその存在を確認し、相続時に確実に所有者を確定するために、できるだけ早く登記を行うことが望ましいです。
2. 建物表題登記の手続きの遅れ
未登記建物には、まず表題登記が必要です。この手続きを放置すると、建物の存在自体が公的に記録されず、相続手続き全体が進まなくなります。建物の表題登記は土地家屋調査士に依頼し、速やかに実行することが重要です。
3. 税務上の扱い
未登記の建物であっても、相続税の対象となります。建物の固定資産税評価額に基づいて相続税が課されるため、未登記建物であっても税務署に対して適切な申告を行う必要があります。税務申告を怠ると、ペナルティや追加納税のリスクが生じる可能性があるため注意が必要です。
まとめ
未登記建物の相続は、通常の相続手続きに加えて建物の登記が必要となるため、複雑な作業が伴います。所有者の確認や建物の表題登記、相続税の申告など、いくつかのステップを踏む必要があり、遅延すると相続人間でのトラブルや法的な問題が生じる可能性があります。
当事務所では、未登記建物の相続に関する手続きをサポートしています。必要な書類の準備から登記手続きまで、一連の相続手続きをスムーズに進められるようお手伝いいたしますので、相続に関するお悩みやご質問がある方は、ぜひご相談ください。